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「向井山朋子」展 - 非日常空間でピースフルなひと時

気がつくと自宅と職場を往復する毎日。それはそれで平和な証拠ではありますが、やっぱり日常に変化や刺激も必要ですよね。ちょっとしたスパイスを求めて、銀座メゾンエルメスフォーラムで開催中の「ピアニスト 向井山朋子」展にいってきました。

 

 

今までにない展覧会

向井山さんはオランダ・アムステルダムを拠点に置き、国際的に活躍しているピアニストでありアーティスト。フライヤーには

“たったひとりの観客のためのコンサートや、舞台に鑑賞者が上がることで成立するパフォーマンスなど、従来の形式にとらわれない制作に挑戦する”

と書かれています。

 

今回の展覧会(インスタレーションに近い)もかなりチャレンジングな構成です。会期の2月5日から28日まで、毎日50〜120分のピアノパフォーマンスが行われ、前後の1時間を含めた数時間だけオープンするのです。しかも演奏開始時間が毎日1時間ずつずれていきます。私が訪れた12日は18時オープン、19時演奏スタート、22時クローズでした。翌日は19時オープン、20時演奏スタート、23時クローズといった具合です。

 

突如あらわれた異空間

仕事帰りに急いで会場に向かうと、幸いなことに演奏中でも入場できました。

メゾンエルメス8階のギャラリーに足を踏み入れると、そこは何台ものピアノがランダムに転がり、重なり、空中に浮遊する異空間となっています。

 

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メゾンエルメスは世界的な建築家、レンゾ・ピアノによる設計で、正方形のガラスブロックに覆われた美しいビル。ガラスブロック越しの銀座の街のネオンは、ほんのりとした明るさで、柔らかく暗がりのピアノたちを浮かび上がらせていました。絵本にでてきそうな不思議な光景です。

 

スポットライトに照らされた1台のグランドピアノに、向井山さんの姿がありました。静まりかえった会場で、ピアノ周りの人たちは床に座って演奏に聴き入っています。私を含め、立ったままの人もいます。こんなスタイルで演奏を聴くのも珍しいですよね。学校でピアノを弾く先生を囲む生徒たちみたいで、演奏者との距離の近さがアットホームに感じられました。

 

音楽でメディテーション

演目は毎日変わるようです。会場入り口に書かれたメモには

曲名:カント オスティナート(Canto Ostinato)

作曲:シミオン テン ホルト(Simeon ten Holt)

と書かれていました。

 

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短いフレーズが繰り返され、少しずつ変化していくので、最初はいつまで続くのか、途中で退屈しないかちょっぴり不安に駆られたのが正直なところでした。ところがメロディーの心地よさとゆらめくような繊細な変化が楽しく、ずっと聴いていたくなります。窓ガラスに水滴がゆっくりと集まって小さな流れになる様や、雪解け水が小川に注がれる春の情景、あるいは大きな雨粒が大地を打ちつける夕暮れ、そんな“水”に関わる景色が浮かんできました。音楽でメディテーションしたような、つかの間の静謐な時間でした。

 

全く知らない作曲家だったので調べてみたところ、シミオン(シメオンが一般的のようです)・テン・ ホルト(1923-2012)はオランダの作曲家で、“独特のミニマルミュージックの作風で知られる”とのこと。(Wikipediaより抜粋)

未知の世界に気づき、興味が広がるのもこんな機会があってこそだと思いませんか?

 

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tower.jp

 

向井山さんのオーラ

画像の通り、きりりとした目力が印象的な向井山さん。ファッションデザイナーの稲葉佳恵っぽいな、と思いました。意思の強そうなところはオノヨーコに似ています。

夜会巻きにしたグレイヘアに真っ赤なルージュがよく映えていました。この日はデコルテ周りにビジューのついた、サテンのピンクのドレス姿。演奏が終わり、にこやかに周囲に会釈をすると、私のすぐ目の前を通り過ぎたのです。演奏中の存在感からは想像できないほど小柄で、引き締まった腕と背中についみとれてしまいました。大人の魅力、色気がある女性には憧れてしまいます。

 

最後にお詫び

ちょっとしたショートトリップを味わうような体験が、銀座の中心で、しかも無料で叶う。というわけで絶賛おすすめ中と言いたいところですが……

 

今後会場オープン時間が夜中から深夜、早朝と移行しつつあるので、電車でいくのは難しいと思います(汗)。もっと早く紹介できればよかったのですが……申し訳ないです。

スケジュールなど詳しくはこちらでご確認を。

www.maisonhermes.jp

早起きが得意なかたには2月23日(土)あたりをおすすめします。この日は会場オープン5時、パフォーマンス開始6時、会場クローズ9時です。

早朝の銀座を歩くのも非日常感があっていいかもしれないですよね。

なんて苦しいフォローでした!