本好き憧れの地「阿佐ヶ谷書庫」を見学!
突然ですが、皆さま、どんどんたまっていく本たちをどうしていますか?
いつか所有する本を収納できる、自分だけのライブラリーを持ちたいという方もいらっしゃるのでは?
「阿佐ヶ谷書庫」は社会経済学者・松原隆一郎氏の仕事場兼書庫です。建築家・堀部安嗣氏の設計によって2013年に完成しました。
これが魅力的な建物なのです。こんな空間が欲しい!と思わせるツボがそこかしこにありました。本好き人間にとって、憧れの地、ともいえる場所の内覧会に参加してきたので、ぜひご紹介したいと思います。
扉の内側は別世界
中央線の阿佐ヶ谷駅から歩いて20分ほどのバス通り沿いに、阿佐ヶ谷書庫はひっそりと
佇んでいます。壁は暗い小豆色で、小さな窓が2つだけみえます。
家なのか倉庫なのか、よく分からない外観です。本当に目立たない!
ところが玄関扉を開けると、目の前に見えるのは本、本、本……。
円筒形の空間の壁面はびっしりと本で埋めつくされています。そこには外観からは想像もつかない、濃密な別世界が広がっているのです。
まずこの外観と内側のギャップに心揺さぶられました。
真面目でファッションも地味〜な眼鏡男子が、話してみたら話題も豊富、顔立ちもなかなかの知的な紳士だった、みたいな感じでしょうか。
すみません、ちょっと妄想入ってます。
考え抜かれたサイズ感
ドアを閉めると、外を走る車の音や人の声などが遮断され、静寂さに包まれました。
書棚に沿って半地下から2階建まで続いている螺旋階段は人1人分位の幅しかないので、他の人とすれ違うには1人が壁面側に極力寄るしかありません。
地下におりて、吹き抜けを見あげると、井戸の底から空を仰ぎ見るような感覚に。
なんだか落ち着くので、瞑想するのにも良さそうです。
2階の天井はドーム型になっていて、中央の丸窓からは満月ように優しい光が降り注ぎます。以前、見学者が連れていた赤ちゃんが、この丸窓をじーっと見つめていたそうです。柔らかい明るさが、お腹にいた頃と似ていたのかもしれませんね。
反対に、2階から地下を見下ろすと、地中深く、どこまでも吸い込まれていきそうになります。
驚いたことにここの土地はわずか8坪ほど、建坪は6坪ほどしかありません。
それでも、2階に書斎とキッチン、1階にトイレとシャワールーム、地下に寝室、と生活に必要な設備はそろっています。
円筒形の書庫から小さな部屋が飛び出したような設計になっていて、コンパクトに凝縮されているのです。“ゆったり”とはいえませんが1人で過ごすには十分なスペースです。
書庫をメインとしたこのサイズ感、隠れ家っぽくてそそられます。秘密めいた場所のようでたまりません。
一万冊の本に包まれる
円筒形の書庫の良さは、全体をぐるりと見渡せて、必要な本をすぐに取り出せることです。
本に囲まれるというより、包まれるような構造は、本好きにとって理想的。
書棚をスライドさせるとか、脚立を使わないと取れない、なんて事態もないのですから。
本の背表紙を眺めていると、マーケティング、流通、小説、などジャンルごとに分類されているのがわかります。本棚を見ればその人がわかる、というけれど、まさしくこの書庫は松原氏の脳内を映し出しているようなもの。
私なら恥ずかしくて人にお見せできないです。でももし自慢の書庫が完成したら、恥ずかしさも吹き飛ぶかも?
静謐な時を重ねて
見学していると、本の香りに混ざってお線香の香りが漂ってきました。書棚の間に木製の伝統的なデザインの仏壇がすっぽりと収まっています。
それはあまりにも周りと自然に溶け込んでいました。松原氏は、一万冊の本と一緒に仏壇を収納する場所も確保して欲しい、と堀部氏に依頼したそうです。
すっくと垂直に伸びる書庫に、ご先祖様たちの歴史が詰まった仏壇。不思議と合うのです。仏壇があることで、より一層静謐な時を感じさせる場所になっていました。
最後に
その場でお二人の著書を購入できるとのことで、『書庫を建てる』を購入。阿佐ヶ谷書庫が竣工するまでの過程を、施主と建築家、それぞれの立場から綴ったドキュメントです。
ちゃっかりサインもいただきました。
松原氏の自宅のリノベーションをきっかけに、お二人のお付き合いは20年以上になるそうです。
和気あいあいとしたお話をききながら、信頼関係で結ばれたお二人がちょっぴり羨ましくなりました。
この関係性があったからこそ、素晴らしい書庫が誕生したのでしょうね。
阿佐ヶ谷書庫は年に1回、内覧会を実施しています。
ご興味がある方はチェックしてみてくださいね。